いぐあな

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ファンタジー
300字小説

魔の領域

 それを見つけたのは開拓団の子供達だった。出来上がったばかりの村のはずれにあった紅い花。幾重にも薄い花びらが重なった美しい花を気に入った子供達は村に持ち帰り、畑の隅に植えた。

 打ち滅ぼした魔族の領域を開拓する為、向かった開拓団から連絡が途絶えた。その報告に勇者一行は開拓村を訪れた。村一面に広がる紅い花畑。その中で村人達は全員、死に絶えていた。
「これは……毒花です」
 葉が根が花びらが蜜が、風に舞う花粉まで全て猛毒なのだという。

『いや違う。ここは魔族だからこそ住める土地なのだ』

 魔王の最後の自分達を嘲るような言葉を思い出す。
 僧侶と魔道士の唱える浄化の呪文を笑うように、風が無人の村を吹き抜けていった。

お題「花畑」

9/17/2023, 11:47:08 AM