かたいなか

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愛情、愛憎、友愛、情愛。
愛と言っても色々な種類があるようです。
愛は食卓にもあるし、そのひと手間にも、あいらびゅーがあるのです。
今回はお菓子とお茶と、大量の厨二要素を仕込んだおはなしをご用意しました。

最近最近、「ここ」ではないどこか、別の世界に、
「世界線管理局」という大きな組織がありまして、
その名のとおり、いろんな世界の違法な渡航を取り締まったり、滅んだ世界への航路を封鎖したり、
あるいは、世界Aが世界Bを技術的に侵略したり、大量に移民を流入させたりするのを、阻止したり。

要するに、すべての世界が「自分の世界」として、独立して、自立して、尊重されるように。
世界に関する色々な仕事をしておるのでした。

で、そんな世界線管理局の「小さな愛」ですが、
丁度、収蔵部収蔵課なる部署の、数ある収蔵庫の中のひとつで、収蔵部の局員が、
キレイなクロスをテーブルに敷いて、1杯のお茶を用意しておりました。

茶っ葉をブレンドしている女性局員は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいました。

「おいし〜お茶を、淹れましょー、とんとん、
もてなしのお茶、淹れましょー、たんたん」
ティースプーンで目分量、しゃっしゃパッパとティーポットに、入れて熱湯を落とすドワーフホト。
「あっためた〜ポットの中は、
小さな愛が、とんたんた、とんたんた〜」

その日、ドワーフホトは幸福でした。
というのも今朝、ドワーフホトが管理している担当の収蔵庫に、敵対組織から高級お菓子のスイーツボックスが届いたのでした!

法務部に通報したら、お菓子が取り上げられてしまいますので、自分でトラップや毒の有無を調べて、
けっきょく、完全に、確実に、まったくの無害であることが判明しましたので、
中身をつぶさに確認して、なかなかの量のプチケーキが入っておりましたので、
収蔵庫からテーブルを引っ張り出して、美しいクロスを選んで敷いて、
そして、お茶の用意を始めたのでした。

なんでも現在、管理局に、「攻撃意志の無い敵対組織の構成員」が、忍び込んでおるそうです。
きっと、ドワーフホトの収蔵庫を侵入経路にして、忍び込んだのでしょう。
お菓子が大好きなドワーフホトのことを知っていて、ドワーフホトがお菓子に気を取られている間に、
ドワーフホトの収蔵庫を通って、管理局に入ったのでしょう。

毒も罠も魔法も薬品も何も検出されないプチケーキを置いておくあたり、忍び込んだ「敵対組織の構成員」は、本当に、攻撃意志が無い模様。
であればドワーフホト、今回ばかりは見逃します。
それがドワーフホトの、小さな友愛なのです。

「法務部の即応部門さんに見つかってぇ、あたしの収蔵庫に逃げてきたらー、
そのときは、隠してあげても、やぶさかでな〜い」

いつでも逃げてきて良いよ、
でも早くしなきゃ、お茶もお菓子も食べちゃうよ。
ポットをお湯で満たしたドワーフホトは、キレイな宝石の砂の砂時計をくるりんぱ。
茶っ葉がお湯の色を染めてゆくのを、鼻歌うたいながら、見つめておりました。

ところで「攻撃意志の無い敵対組織の構成員」って結局誰だったのでしょう?
それはほら、「小さな愛」とは関係無さそうなので、
次に配信されるお題次第ということで。
しゃーない、しゃーない。

6/26/2025, 9:58:54 AM