冷端葵

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春爛漫

 色とりどりの花が咲き乱れ、風が吹けば花びらを散らす。黄金の光に照らされて、地面は地平線の先まで眩しくカラフルに彩られている。
(春だな)
 花の絨毯の上にそっと大の字に寝そべる。数多の生命が目を覚まし、生の活動を開始する季節。力強く希望に満ちた美しい季節。
(……いや、冬か)
 寝そべった背中がひんやりと冷えているのが分かる。大きく投げ出した指の先を温めるものはない。ゆっくりと目を閉じ、鼓動の音さえない無音の中で、肌を撫でる花びらの感触を味わう。
(永遠の冬だ)
 次第に周囲が暗くなるのが分かった。光も風もなくなって色とりどりの花だけが残る。体を包むような花畑に彩られて、穏やかに微笑むように眠りについた。

4/11/2024, 7:54:20 AM