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木枯らし(オリジナル)

僕は泣きながら歩いていた。
学校で友達と喧嘩した。
彼が僕のシャツに油性ペンで落書きをして嗤ったので怒ったら、そんなに怒る事ないだろと逆ギレされ、絶交された。
彼とは一年生の頃から仲良くしていて、唯一と言って良い友達だった。絶交が悲しかったし、イタズラされたシャツを母に心配されるのも嫌だった。
悲しくて苦しくて、僕は家に帰りたくなくて、泣きながら家までの道をノロノロと歩いていた。
すると突然目の前に、編笠を被ってマントを翻した同い年くらいの背の低い少年が現れた。
何のコスプレだろう。
見たことのない少年だ。
僕は少し驚いて、涙が引っ込んだ。
「君は何で泣いているの?」
その少年は、編笠の下から上目遣いに尋ねてきた。
「これ。イタズラされて。お母さんに悪いことしたなって」
服もそんなに数はないのだ。油性ペンだと洗っても消えないだろう。僕はまた悲しくなって涙が溢れた。
「そうか。うん、まぁ、格好良くできるかな?」
彼はそんなことを言う。
「え?」
「ちょっと貸してくれるかい?」
彼は僕の上着を預かると、どこから取り出したのか油性ペンの蓋をキュポンと開けた。
そして、いたずら書きの上に、さらにペンを走らせた。
「えええっ?!!あっ!ひど…」
ヒドイ、と言って止めようとしたのだが、徐々に落書きが格好良い虎の絵に生まれ変わっていった。
「すごい!」
僕は思わず手を叩く。
彼は描き終えるとニコッと笑い、
「気に入らなかったらお母さんにアップリケでもつけてもらうといい」
と言った。
僕は嬉しくなって、彼の手を取った。
「すごく格好良いよ!ありがとう!」
ブンブンと手を上下に振った。彼は僕の勢いにガクガク振り回されながら、
「お友達くんもきっと反省してるよ」
「え?」
「明日、学校でいつも通り話しかけるといい」
と言ってくれた。
そうかな、そうだと良いな。
僕はほんの少しの勇気をもらって、ニッコリと微笑んだ。
彼からシャツを受け取って、着なおす。
母親に、今日素敵な出会いがあった事を話そう。
気分がウキウキしてきて、そういえば、名前を聞かなかったと思い出す。
どこの学校の、何年生だろう。
「君は」
被った上着から首を出すと、びゅうと木枯らしが吹いた。
「わ!」
落ち葉がびっくりするほどの量舞い上がり、両手で顔を庇っているうちに、少年の姿は消えていた。
夢だったのかと上着を見ると、虎柄が残っている。
神様だったのかもしれない。
僕は両手を口の横に添えて、どこに行ったかもわからない彼に届くよう、大声で叫んだ。
「ありがとーーー!」
心がぽかぽかと温かかった。

1/17/2026, 12:36:00 PM