手ぶくろ
寒いって言いながら息を手に包むようにして吹きかけている。吐いた白い息が視界に入った。
寒いから手ぶくろを持ったか聞いたのになんで忘れているんだ。
呆れて吐いた息も白い。
右手の手ぶくろを取って無言で彼女の手にはめてやる。きょとんとした顔もかわいいなんて思うのは惚れた弱みだからか。
大きさの合わないぶかぶかな手ぶくろを嬉しそうに眺めてありがとうなんて言わないでほしい。もっと好きになってしまうし、なんでも許してしまいそうだ。
もう一度大きなため息を吐いて白い息が漂った。
手ぶくろをはめてない丸裸な手で同じ丸裸な彼女の手を取って、コートの中に突っ込んだ。
びっくりしたような、何か言いたいような、彼女を無視してポケットのなかで冷えた手を握りしめた。
12/28/2024, 7:40:01 AM