ホシツキ@フィクション

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ゴワンゴワンと不思議な音が絶え間なくずっと聞こえてくる。
合間合間に女性の声も聞こえる。

それはすごく優しくて、温かくて、聞いているととても落ち着く声だ。

たまに男性の声も聞こえる。
この声も、落ち着くなあ。

でも音しか聞こえない。真っ暗闇の部屋の中でここはどこだと何度考えただろう?

何も見えない真っ暗な部屋のはずなのに、すごく落ち着くし温かい。
この部屋から出たいような、ずっとここに居たいような。

ふわふわとした不思議な感覚だ。
もうちょっと声が聞きたいなあ。話しかけてくれないかなあ?



最近ちょっと部屋が狭くなってきた。なんだか窮屈で、身動きも取りづらい。
相変わらずゴワンゴワンという音と女性の声は毎日聞こえる。
たまに男性の声も。

なんだか早く部屋から出たい気持ちが強くなってきた。
この暗闇にも飽きてきた。音と声は落ち着くけど、もっと近くで聞きたいな。



苦しい、狭い、怖い、どうしよう。
勇気をだして部屋を出ようとしたら苦しくてしょうがない。
出なきゃ良かった。いや、早く出なきゃ?どっち?

助けて、頑張る、助けて、頑張る!

後ろから強く押される。
部屋から出て行けと言わんばかりのとてつもない強い力だ。
少しずつ女性の声が近づいてくる。
男性の声も聞こえるし、他にもたくさんの声が聞こえる。

なんだか勇気がさらに湧いてきた!
なんだか行けそうな気がしてきた!

頑張る!

どれくらい時間が経っただろう?少しずつ周りの音が大きくなってきた。

そして――――
「出れた!」

と叫ぶと同時に周りの音が鮮明に聞こえてきた。
ああここが部屋の外!体が触られる感覚。
なんかゴシゴシされてる!怖い!

「離して!降ろして!あの女性の所へ行きたい!」

早く落ち着く声の元へ行きたい、
そのために勇気を振り絞って出てきたんだから。

目になにかが入ってくる。冷たい!
と思うと同時に目が開く。

「まぶしい、これがまぶしいってこと?」

大声で問いかけるとたくさんの人がワアッと声を出す。

ぼんやり見える視界の中で、唯一はっきり見えた気がする。

あぁ、この女性だ。
大好きで安心する声!

「会いたかった!会いたかったよ!」


暖かくて優しい光の中で、やっとその女性と触れ合う。
“ママ”だ!
握ったものはゴツゴツして固い指、暗い部屋で聞いてた時よりも高い声。
“パパ”だ!

最初から分かってたんだ。この2人と会うために暗い部屋の中で過ごしていたんだ。この2人だから幸せな気持ちになってたんだ。

自分だけの、あたたかい、やわらかい光。

ママ!パパ!だいすき!



【やわらかな光】~完~


何度経験しても毎回思います。
生命の神秘だ、って。人から人が産まれるって当たり前だけど全然当たり前じゃないですよね。
お腹の子が無事に産まれてくるなら自分の命はどうなったっていい。
この子だけは!この子だけは!
そんなことばかり考えてました。命懸け。
楽な出産なんてないです。
マタママの旦那さん、彼氏さん、相手をいたわって下さいね。
正直貴方に構う余裕なくて寂しいかもしれないけど、
愛する貴方のために彼女らは命張ってます。


ちなみに私はパートナーに暴言は吐かなかったようですが
小が何度も出てたみたいです。
でも恥ずかしくはありませんでした。(というかそんな余裕無い)

10/16/2022, 11:33:13 AM