あたしには、好きなものがある。
朝日だ。
こんなこと、しょーもないから誰にも言ってない。いきなり「朝日が好きなんだよね」なんて言われたら困惑するでしょ?だから言ってないの。
それに、言う必要なんてないと思ってる。朝日が好きだという事実は、あたしだけが知っていればそれでいい。
でも今日は、生憎の雨模様だった。これじゃあ、朝日が見れないじゃないの。まあ、自然だから仕方ないよね。あたしみたいな人間が、あーだこーだ文句言って変わるもんじゃないしさ。
***
目を覚ましてカーテンを開けると、あたしが待ち望んでいたものが姿を見せてくれた。
朝日だ。
急いで支度をして家を飛び出す。昨日が一日中雨で曇りだったからか、そこまで冷えていなかった。そろそろ夏だし、薄手のもの引っ張り出さなきゃ…なんて思いながら、誰もいない道を歩く。
光るアスファルトに足を踏み入れると、じんわりと温もりが伝わってきた。これが欲しかった。雲の残る青い空を見つめる。
あたしが朝日が好きなのは、温もりがあるからだけじゃない。
なんだか、応援されているような気分になるからだ。このことも口には出せないから、あたしだけの秘密にしてる。
「それじゃ、行ってきます」
何も言わない朝日に手を振って、また歩き出した。
2024/06/09
朝日の温もり
6/9/2024, 12:21:56 PM