「これからの世界を動かすんだよ」
レアアースという言葉を、僕は彼女から教わった。
キャンパスの図書館前、
春の光が白く反射するベンチで、
彼女はそう言って笑った。
十七歳。
高校の制服のまま、未来の話をするのが似合いすぎる少女だった。
僕は二十歳の大学生だ。
年齢の差は、ほんの三年。
それでも、彼女はいつも少し遠くにいた。
大学では資源工学を学んでいる。
レアアースの研究は、環境と経済を両立させる鍵だと言われていた。
未来を支える技術。
希望という言葉を、学問として扱える世界に、僕は少し酔っていた。
アルバイトも順調だった。
株の勉強を始め、小さな成功を重ね、生活は驚くほど軽やかになった。
お金に追われない日々は、心まで自由にしてくれる。
お気に入りのカフェでコーヒーを飲み、夜はゆっくり本を読む。
「豊かさって、こういうことかもしれない」と思えるくらいには。
それでも――
ふとした瞬間、彼女のことを思い出す。
進路の相談をされた日。
「私、未来に行きたいんだ」
そう言って、目を輝かせていた横顔。
彼女は今も、どこかで未来を信じているだろうか。
年齢を理由に、連絡を取るのをやめたのは僕だった。
大人ぶったつもりで、ただ臆病だっただけかもしれない。
彼女のまっすぐな視線を、受け止める自信がなかった。
研究室の窓から、夕焼けを見る。
空はレアアースの元素図鑑みたいに、複雑で、美しい色をしていた。
僕は思う。
未来は、技術やお金だけでできているんじゃない。
誰かに「会いたい」と願う気持ちが、きっと原動力なんだ。
もう一度、彼女に会いたい。
十七歳のままの憧れとしてではなく、
それぞれの時間を歩いたあとで。
豊かに生きるって、
ただ気分良く暮らすことじゃない。
大切な誰かを思い出せる心を、失わないことだ。
君に会いたくて。
その想いが、今日も僕を未来へ進ませている。
君に会
い
たくて 完
1/20/2026, 9:42:07 AM