気力がない

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「冬は一緒に居られない」
恋人の言葉に足を止める。振り返れば項垂れて突っ立つ少女が。
「...なんで?」
私はなるべく刺激しないようにそっと触れた。一瞬びくりと身体を強ばらせ、彼女はゆっくりとその顔を上げた。長い前髪の隙間からは迷子の子犬のような瞳が見える。
「...ひ、引越しだって。おとうさんが言ってた」
再び瞼で半分ほど目を隠し、彼女は私のシャツをキュッと掴んだ。今にも泣き出しそうな震えた声に思わず苦笑いを浮かべる。
「うん...そっか。じゃあ、いいよ」
そう言って頭を優しく撫でれば、彼女は「本当!?」と目を輝かせた。
「ほんと、本当の本当に!?」
若干吃りを含む口調で、彼女は嬉しそうに私に抱きつく。愛らしい恋人の行動に溢れる愛おしさを押し殺しながら、その背をぎゅっと抱いて体温を確かめる。
「...本当だよ。来週の月曜日にでも」
一緒に死のう。
[題:冬は一緒に]

12/19/2023, 4:34:51 AM