NoName

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 あんまり近づかれると、さっと避けたくなる境界線がある。その線の手前から恐る恐る人と接しているのだけれど、時々、ぽんと飛び越えてくる人がいる。うわっと思うけれど、よくよくその人のことを知ると、目が離せなくなったりする。

 でも、さらに知っていくと、その人こそ踏み込めない線がずっと手前にあった。核心のところには容易に近づけない。だから、勇気を出して、自分の線をえいっと飛び越えようとしてみる。でもぱっと出て、すぐ戻ってしまう。

 そんな臆病なやり取りを繰り返しては、ずっと平行線をたどっている。自分は線を張ったまま、相手には、またぽんと越えてきてくれないかなんて思ってしまう。本当に面倒くさい。
 

「心の境界線」

11/10/2025, 7:57:02 AM