うどん巫女

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友情

「友情なんてクソ食らえ!!」
馴染みの居酒屋チェーン店に入るなり聞こえてきた友人の声に、思わず苦笑いする。どうやら今夜もなかなか悪酔いしているようだ。店員も慣れたもので、私の顔を見るなりほっとしたような表情になって、すぐに友人がいる席に案内してくれた。
「なに、今日も荒れてんね」
そう言いながら、友人、美香の向かいの席に腰を下ろす。テーブルの上には、空になったビールジョッキが数本と、鳥串やら枝豆やらの残骸。約束の時間からそう遅れてはいないはずだが、すっかり出来上がっている。
「菜々子ぉ〜遅いぞ〜」
「はいはいすみませんね、お仕事終わってすぐ飛んできましたよっと」
「う〜…」
謎の呻き声を上げたあと、テーブルに突っ伏す美香。大体彼女がこんなに泥酔するのは、失恋した時と相場が決まっている。
「まぁた失恋?」
「失恋すらしてない…『オトモダチ』だってさ!はぁ〜、やんなるわほんと…」
可愛くていい子だから大好きだったのに、とぶつぶつ呟く美香を眺めながら、「嫌われてないだけマシじゃない?」と言ってみる。
「嫌われてた方がすっぱり諦められるからマシよぉ。中途半端に優しくされる方が何倍も最悪…」
「ふぅん…そういうもんなのね」
突然、美香がガバッと起き上がった。
「あぁ〜もう、ほんと、『オトモダチ』なんてろくなもんじゃないわぁ!」
「はいはい、お店に迷惑だからもっと静かにね」
「へぇ〜い…」
再び突っ伏した美香に適当に相槌を打ちながら、こいつはわざわざこうして介抱している『オトモダチ』のことを忘れているのかしら、なんて皮肉に思う。
まぁ、友情なんてそんなもんだ。

7/25/2023, 8:37:48 AM