白井墓守

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『静寂の中心で』

――彼は静寂の中心で何を思ったのだろうか。


秋、というのは、どこか物悲しい。
青々とした葉っぱが、色を失い光を失い、カサカサになってハラリと落ちていく。
全体的に緑から茶に変わり、枯れていく世界は、まるで世界の終わりを連想させてしまう。

だから、だろうか。

彼がたった一人で、森の中に立っていた。
酷く静かなその場所は、虫の鳴き声すらなく、まるで世界という一本の木が本当に枯れ落ちてしまったかのような孤独だった。

思わず手を伸ばしかけ、ふと気づいて手を引いた。
……かける言葉が、見つからなかったからだ。

去年の秋、彼はここで最愛である妹を喪った。
どこにでもある事故だった、どうしようもない事だった。


結局、親友である自分は何も言えず、ただただずっとその場で彼は見続けていた。


おわり

10/7/2025, 7:49:10 PM