薄氷

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「今日もお花に水をあげてくれてありがとうねぇ! (本名)ちゃん、お花いつくらいに咲くのかしら?」
これは小学6年生の夏休み間近の話だった。
学校の委員会で、私は環境委員会という委員会に入っていた。
環境委員は生物、植物、学校環境(掲示板、掃除)の3つのグループに別れて仕事をするらしく、繊細な生き物の世話や、掃除なんて面倒臭い仕事は嫌だった私は植物グループを希望した。このグループでもリーダーを作るらしく、6年生だからと私はリーダーに推薦され、残念なことにリーダーになってしまった。
植物グループの仕事は勘づいている人が多いかもしれないが、基本植物の水やりだ。たまに花を植えたり土を入れ替えたりするくらい。滅多にやらないが。
まぁこんなことは忘れていい。無駄話をしすぎた。
冒頭のセリフを言った人はどういう立場だとみんなは思ったのだろう。おおよそ担任や校長、委員会の先生あたりか?
正解は上記の人達ではなく、よく学校に来るばっちゃん(おばあ様)だ。


「割愛」これからばっちゃんはSと表記します。


「まぁ仕事なんで。ミニひまわりとかそんな名前だったし、そろそろ咲いていいと思うんですけど…中々咲きませんねぇ…」
適当に返事をした。別に適当だからといってSが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。
「そうなのね…?あ、あれ!あそこつぼみが開花してきてない!?」
Sはそういうと西側の花壇を指した。数秒探したあと、それっぽいものを見つけた。
近寄ると開花しそうな状態だった。


「本当に開花しかけですよ。水水〜っと」
私はそういいそこの花壇に持っていたジョウロのの水をたくさんやった。
とても綺麗だ。つぼみにキラキラと光る水がつき、花が可憐に強く咲いているようだ。
それから残りの花壇にもたくさん水をあげ、いつも通りホームルームの最中の教室に入った。

それから休み時間や体育の時には必ず花の様子を見に行き、水が足りなそうだったら水をあげた。
それを数回繰り返したある日、花が完璧に咲いた。
それを見た瞬間、自然と目は開き口角が上がった。
心の底から何かが勢いよく沸きあがってきたように感じた。その瞬間、達成感や満足感に似た感情が強く湧き上がり言葉に表せないほど嬉しかった。
今はもうその周辺のことは覚えていないが、凛々しく可憐に、そして美しく咲いていたあの花や、雲ひとつない暑いあの晴天はしっかりと覚えている__

7/23/2024, 12:52:50 PM