箱庭メリィ

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どれだけ手を伸ばしても、あなたには届かない。

彼を見つけたときから。
彼に憧れる同士を見つけたときから。
彼の後ろに、立つことが出来るようになってから――。

ずっと、ずっと、焦がれている。文字通りこの身が焼き焦げてしまうほど。

どれだけ努力を重ねても、どれだけその背に縋ろうとも。
彼は俺の手をするりと抜けてまた先へと行ってしまう。

〈鬼さんこちら、手のなる方へ。来れるものなら、来てごらん〉

言わんばかりの表情で彼は振り向く。
挑発的な瞳を湛えた、穏やかな笑みで。

いつか。いつか必ずあなたの横に立ってみせる。

そして――。今度は俺が手を差しのべてやる。



『届かぬ想い』

4/15/2023, 12:41:00 PM