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黄昏に身を投じよ。直に日が暮れる。――例えばの話だ。街中の灯りが消え、時計の針が十二を指す頃。灰被りの姫君にかかる魔法が解けたとして、明日が来る保証なんてどこにもありはしないだろう。置き去りにされた硝子の靴など粉々にしてしまうのが吉だろうに。真に気付かされた幼き子らは、今日よ往くなと泣き叫ぶ。あやす素振りで細々と紡がれる大人達の子守唄は、もはや少しの意味もなさない。それでも彼らは云うのだ。明けない夜などないのだから、どうか安心して眠りなさいと。紡ぐ言の葉の合間合間に、口を揃えて、云うのだ。

『今日にさよなら』

2/18/2024, 11:40:26 AM