【149,お題:イブの夜】
「サンタさん早く来ないかな~」
そう言っていた日々が懐かしい。
----------------
「吉野!またミスだぞ、これで何度目だ?」
「...すみません」
全然反省なんてしていない、ふざけている訳ではない
反省する余裕もない程、憔悴しきっていたのだ
「はぁ、......やる気ないなら帰っていいんだぞ?」
その帰っていいんだぞ、は心配なんかじゃないのも、大人になると理解が容易に出来る
本心ではない、うわべだけの平謝り
謝って、働いて、謝罪して、またディスクに向かう。
時は過ぎて、子供が一年の中で自分の誕生日の次に待ちわびるイベント、クリスマスがやって来る
イブの夜、世の中の子供はツリーを見上げ、手紙を書いて、親に「サンタさんまだ来ない?」と急かすんだろう
かくいう俺は、運良く仕事を抜けられたため
何日ぶりかに、家へ向かう最中だ
「ママ~サンタさん今日来る?」
「そうよ~、だから翔太も早く寝ないとね」
「おとーさんはー?」
「パパも今日は早く帰るって~」
「やったあ!」
街は明るい、緑と赤の光に照らされて連日徹夜だった目は悲鳴を上げた
どこかの親子の会話が聞こえた、自分もあんな時期があったというのだから不思議だ
もう何年も家族とは連絡を取っていない
なんだかやけに自分が惨めに思えて、胸を裂いて内蔵をかきむしりたい衝動があった
もう全てから目を逸らして、家に帰って泥のように寝たい
「サンタさんサンタさ~ん♪プレゼント貰ったらみんなで遊ぶんだ~」
「早く帰って寝よう、どうせすぐ呼び出される」
皆それぞれ帰路に着く、幸か不幸かイブの夜
12/24/2023, 2:31:39 PM