sora

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良いお年を

ぐつぐつと野菜と鴨肉を煮込んでいく
冬の鍋は格別だ
すっかり12月31日の夕飯は鴨鍋が定番化している

目の前に座る彼と向かい合わせで鍋をつつくこの時がどうしようもなく幸せだ
そんな幸せを1人噛み締めている間に、どんどん鍋の具材が減っていく

『なぁ、なんで”鴨鍋”なの』
「えー、特に理由なんてないけど、鴨とお野菜のお出汁が出て美味しいでしょ?しかもこの後はそのまま年越しそばできるし」

せっかく答えたのに、ふーんと興味のなさそうな返事をされる

『なんか理由があんのかと思った』
「理由って?」
『いやお正月的ななにか』
「ないよ、そんなの」

そう言って私がふっと笑うとそれもそうかと納得する彼が
『まぁ理由なんてなくてもこうして来年も向かい合ってご飯食べられれば何でもいいか』
と言うので私も嬉しくなる

同じこと考えてた…嬉しい

先ほど食べた鴨を噛みながら、しばらく嬉しさを噛み締めていると

『昔は2人とも年末は実家帰ってたから、良いお年を〜って言ってたよな。今は毎年のように同じ鍋つついて”良いお年を”じゃなくて”あけましておめでとう”って言い合えるのが嬉しいよ』
とまた彼が嬉しくなることを言ってくれる

「今年、どうしたの…突然…」と少し赤くなった顔はお鍋で熱くなったせいにして尋ねる

『…今日の占いで思ったことは口にした方がいいって…今年も終わるしたまには良いかと思って…』
と彼もまた顔を赤らめながら答えた

2人して顔を赤くしてもじもじしてるこの状況に耐えられず笑い出す

来年もこんな穏やかな日々が続くと良いな

『来年もこんな穏やかな日々を過ごせるといいな』

はっと彼の顔を見て、しばらくそのままでいるとどうしたの?と聞かれる

「何でもない」と笑って返す

なんでもない時間が幸せだ

来年も再来年もその先もなんでもない日々を貴方と過ごしていく






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あけましておめでとうございます!
本当は昨日のうちに出したかったのですが、バタバタしていて今日になってしまいました…
まだこのアプリを始めたばかりで、拙い文章なのにハートを下さる皆様本当にありがとうございます!
今年も自分のペースで書いていけたらいいなと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

1/1/2024, 1:33:24 AM