2025年、元旦。
この度新しく一年が始まるということで、干支交代の儀式が行われようとしていました。
一年を象徴する、干支。
この干支が交代することで、ようやく本当の意味で一年が切り替わる大切なイベントです
ですが今年、とんでもないトラブルが起りました。
今年の干支である巳、つまりヘビが行方をくらませたのです
「巳はどうした!
これでは一年が始められんぞ」
神様は叫びます。
一年が始まらないという、重大な事件。
神様はとても焦っていました。
「すいません。
いつの間に抜け出したのか、待合室はすでにもぬけの殻でした。
まさか自身の抜け殻を身代わりにするとは……」
儀式をスタッフが申し訳無さそうに頭を下げます。
神様はスタッフを罵倒したくなりましたが、そんな事をしても何の解決にもなりません
神様は頭を切り替え、これからの事を考えます
しかし、都合よく解決策は出てきません
考えても考えても、一つも策は出てきません。
刻一刻と、儀式の時間は近づいて来ます。
「もう諦めるしか無いのか……」
神様が全てを投げ出そうとした、そんな時です。
「お疲れ様でーす」
前年の業務を終えた辰が入ってきました。
何も知らない辰は、呑気に「今年も大変だったよ」とスタッフに言いながら、神様のもとに来ます。
「神様、私の仕事は滞りなく終わりました。
引き継ぎしたいのですが、巳はどこですか?」
神様は、辰を見て名案を閃きます。
「辰よ、巳に引き継ぎする必要はない」
「……どういうことですか?」
辰は不審げに目を細めます
神様の真意を測りかねていましたが、ただならぬ雰囲気だけは感じ取りました。
辰はゴクリとツバを飲み、神様の言葉を待ちます。
「要点たけ伝える。
2025年もお前がやれ」
辰は予想外の言葉に、目が点になります。
数秒後、再起動した辰は、神様に詰め寄ります
「今、なんと言われましたか……?」
「巳が行方を眩ませた。
ヤツのフリをして、この場をしのいでほしい」
「無理ですって」
「大丈夫だ。
お前と巳は似ているからな」
「形だけはね!
でも大きさでバレます!」
「そこは魔法でごまかす」
「しかし私には手足があります。
誤魔化せません!」
「そこは……
なんとかしてくれ」
「やっぱり無茶ですよ!」
辰は拒否しますが、神様も後がありません。
なんとか断ろうとする辰と、押し切ろうとする神様で、攻防が繰り広げられます。
長い間、言い争った後、辰はようやく首を縦に振りました。
「分かりました。
他に方法が無いなら仕方ありません」
「おお、助かる!」
「ですが早く巳を見つけてくださいね」
「分かっとる。
では早速だが、新年の挨拶をしてもらいたい」
それを聞いて、辰は大きなため息をつきます。
「はあ、新年の挨拶が一番難関なんですよね……
皆に姿を見せるから……」
「ああ、無茶を言っているのは分かっとる。
バレないように、くれぐれもたのむぞ」
「ベストを尽くしましょう」
そして、辰は儀式の場に現れます。
体は神様の魔法で小さくなりましたが、手足はどうにもなりませんでした。
しかし、辰はあえて手足を隠そうとせず、辰は挨拶を始めました。
「明けましておめでとうございます。
巳は体調不良で欠席なので、本日は双子の弟の私が務めさせて頂きます。
え、似てない?
ああ、あれですよ。
蛇足ってやつです」
1/2/2025, 2:01:00 PM