霜月 朔(創作)

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眠りにつく前に。




静かな夜の闇が、
街を優しく包む時刻。
私達は、刹那の恋人に変わる。

昼間は他の人に向けられる、
愛しい貴方の微笑みは、
今は、私だけのものになる。

心の奥底に沈んだ、
過ぎ去った恋の影に、
気付かぬふりをして、
貴方に向けて囁くのは、
甘く、切ない、愛の言葉。

貴方の温もりが、
心の傷を癒すと信じて。
私に儚い愛を求める貴方を、
この腕に抱いて、
私もまた、幻の恋に身を窶すんだ。

今だけは。
貴方は、私だけのもの。
私は、貴方だけのもの。
私達を引き裂くものは、
何もないから。

だから。
何もかも、分からなくなる位。
私に甘えて、そして、溺れて。
全てを忘れられる位、
貴方を愛してあげるから。

眠りに就く前に、
もう一度、抱きしめて。
もう一度、唇を重ねて。
貴方の温もりを、
私の記憶に刻む為に。

朝が来たら、
私達は只の友達に戻る。
それが、私達の定めだから。

11/2/2024, 6:28:55 PM