未知亜

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 肩書きの違う相談員を前に何度も同じ話をしてきた。自分の言葉に替えるのがいいのだと促されて。淀みなく尤もらしく身の上話が口から流れ、遠隔操作の気分になる。

 お話あのね。幼い頃はそう言って思いつくまま話せた。あの頃と同じように手のひらをうえに向け、小指同士をトントンとたたき合わせてみる。

 渡されたお菓子の包みを握り締めたら、緑と赤のリボンが優しく絡む。何をどれだけ話しても聞いてもらっても、どこか作り物みたいだけど。あの頃の記憶を、無条件の安心を、ひとりぼっちの今こんなにも望む。

『手のひらの贈り物』『時を結ぶリボン』

12/21/2025, 9:03:40 AM