せつか

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「あぁ、今日は月が綺麗だね」
「月見をする日らしいですよ」
「日にちが決まってるんだ? いつでも見上げて、楽しめばいいのに。なんだか不思議だね」
「特別綺麗に見えるからじゃないですか」
「なるほど」
「この花だってそうでしょう? 芽が出て茎や葉が伸びて、蕾が膨らんで、花が咲く。そのタイミングを見計らって、私も貴方も見に来たんですから」
「そうだね。そう考えると一番綺麗に見える日が分かるというのはありがたい事なのかも」
「それにしても、確かに見事な月ですね」
「私達がこうして見ている月の光は、本当は太陽の光なんだよな」
「そうですね。月自身が輝いているわけではなく、太陽の光を受けて反射した光が私達の目に届いている」
「·····君はよく私を褒めてくれるけど、私が正しくあれるのは君がいるからだよ」
「なんです突然」
「私も君という光を受けて輝けるんだ」
「·····」
「この花が綺麗に咲くのも、陽の光をその身に受けているからだろう? 私の太陽は君だよ」
「·····ベタな口説き文句ですね」
「とか言って、口説かれてくれないくせに」
「だって、口説く必要無いでしょう。私はこんなに貴方に焦がれている」
「·····それなら私だってそうだよ」
「貴方、ちょっと喋り過ぎですよ」
「·····あぁ、ごめん」
「手、出して下さい」
「ん」
「せっかくですから歩きましょう。花畑はこんなに広いんですから」
「·····ふふ」

――なんだ。お互いとっくに口説かれてたんだ。


END


「花畑」

9/17/2024, 12:11:05 PM