「よっ大我、久しぶり!」
「翼!?お前なんで?!」
突然の訪問だった。
10年振りに会った親友は「ドッキリ大成功〜」などとこちらの心情などつゆ知らず、ふざけた事を抜かしていた。
「驚いた?驚いたか?」
ニヤニヤと顔を覗き込んでくる翼にイラッとする。
そうだこいつはこういうヤツだった。
大我はため息をつき、肩に腕を回してこようとする翼を手で軽くあしらった。
冷たい対応に不貞腐れる翼をつま先から頭のてっぺんまでまじまじとみる。
高校生の頃はお互い同じくらいの背の高さで毎日どちらが背が高いか競っていたのに、少し会わない間に翼はスラッと背が伸びスーツをかっこよく着こなしている大人になっていた。
羨ましい限りだ。
悲しいことに高校生から成長が止まってしまった大我は無意識のうちに猫背気味の背筋が伸びていた。
「それにしてもお前なんでこっち来たんだよ」
「え〜?やっぱ気になっちゃう感じ??まあ、あれだ...強いて言うなら大我に会いたかったから...とか?」
「お前...今の状況分かってんのかよ!!?」
翼のヘラヘラとした態度に再度苛立たしさが募る。
むしゃくしゃした気持ちをぶちまけてやろうとしたのに出てきたのは涙ばかりで言葉が上手く紡げない。
「なんで...だって...お前まだ」
「まあまあ、落ち着けよ。時間は十分すぎるくらいにあるんだろ?」
しゃがみ込み赤子のように泣きじゃくる大我の隣に腰を下ろし翼は背中を優しく摩った。
「ほら、いい加減泣きやめって。俺初めての場所なんだし色々と案内してくれよ」
立ち上がり案内をしろと言う割にはフラフラと勝手に歩き出す翼を涙が溜まった目で追いかける。
久しぶりに会えた嬉しさと苦しさふたつの感情が混じり合い心が苦しい。
「ばか。まだこっちに来るには早いんだよ...」
親友の頭上に浮いている金色の輪っかを静かに睨み呟いた。
【突然の君の訪問。】
8/28/2024, 1:55:33 PM