―心の灯火―
少し前まで燃え盛っていた心が、
囲炉裏の灰を被せられたように燻ってしまい、
やがて心は冷え切り、火の明るさは消えてしまった。
それなのに、今でも時々、
あの頃の熱が胸の中で蘇って、
私自身に訴えかけてくる。
まだやれるだろう、あんな奴らに怯む程、
お前は弱い奴では無い筈だろう、と。
その度に胸に手を当て、目を瞑ってみる。
俯くと、トラウマが脳裏を駆け巡ってきて
足が竦むような思いがする。
影からの目線。大きな馬鹿笑い。
私をチクチクと刺してくる言葉の数々。
恐怖で目眩がしそうになって、
呼吸が浅くなり、胃も縮む。
たくさんの視線を浴びながらも力を尽くし、
傷だらけになりボロボロに朽ちて。
その刹那に私の火は吹き消された。
それでも、心は冷めきっていなかった。
まだあの温かさが残っていた。
私はまだやれる。大丈夫だと。
自分自身に喝を入れて顔を上げる。
目を開ければ眩しい世界が広がっている。
足を踏み入れると溶けてしまいそうな気がして怖い。
けれど歩みを止めることは無い。
私の中には、あの日から灰の中で
眠り続けていた火種が、ゆらゆらと揺れ動いて、
その影を大きく伸ばしている。
それは心の灯火となり、今も私を奮い立たせる。
灯火はバチバチと音を立てながら爆ぜ、
火花となって散るけども、
無数の火花は辺りを舞って、
私の道を照らしている。
9/2/2023, 1:19:43 PM