透明な涙
泣いているように見えた。
それが酷く煩わしかった。
――だから連れ去った。
***
昼休み、渡り廊下を歩いていると不意に後ろから腕を引かれた。
「おい」
「!……なんだ、君か。どうかした?」
「いいから行くぞ」
「え、行くってどこに……」
腕を引かれ連れてこられたのは植物園だった。
これはバレてる……
植物園に着いてからも腕が離されることは無く、ようやく離されたのは彼がいつも昼寝に使っているスペースまで来た時だった。
彼はその場で横になると何も言わずに隣を叩いた。ここに来いと言っているのだ。
仕方ないとため息をひとつ吐き彼の望み通り横になる。
頭上に腕が回ってきてそのまま抱き込まれた。
「少しくらい無理をしても平気だと思ったんだ、明日の集会が終われば暫く予定もない。だから――」
黙っていても彼はきっと何も言わないのだろうが何となく後ろめたくて言い訳をしてしまう。
零された言い訳を彼は黙って聞いていた。
***
ようやく寝たか。
Kの腕の中では××が静かに眠っていた。
××は周囲によく頼られる。そのくせ自身は誰をも頼ろうとしない。そうして限界を迎えるのだ。
その度にKは××を植物園へと連れ込んだ。
××が泣くことはない。きっと××はKがいなくとも一人で何とかしてしまうのだろう。
それでも苦しい時やつらい時くらい己の腕の中にいれば良いとKは思うのだ。
1/16/2025, 5:37:55 PM