白桃

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『海へ』

隣同士で座った砂浜は想像以上に暑かった。
まだ数分も座っていないのに耐えられなくなった僕は、隣に座る彼に日陰に行こうと提案しようとした。
横を見た先には彼の目が僕を捉えていた。
僕を見つめるその瞳は驚くほどに澄んだ真っ黒な闇で、あっという間に心を吸い込んでいく。キラキラとした瞳なんて可愛いもんじゃなくて、テラテラと艶めかしく深い黒が動いて僕をとらえる。逃げようと思えば逃げられる。ただ彼が逃がそうとしてくれないだけ。言葉が押し込められる。
頭の中で鳴り響くのは蝉の声か、波の音か……。

8/23/2023, 7:23:23 PM