自転車に乗って緑のトンネルを抜けると、
照りつける太陽が、灰色の世界を光らせる。
グラジオラスとスターチスを添え、
あの人に挨拶をする。
川のせせらぎ乾いた音。風の匂いに揺れる鈴。
合唱曲に滴る汗。暑い日々が続きますね。
カブトムシを捕まえ持ち帰り、
一丁前育てると言い張り、結局いつも人任せ。
当の私は、スイカとひやむぎに舌鼓。
午後から親父と釣りに行く。
釣り竿片手に肩から餌箱をかけ、自転車漕いで川まで走る。キスがよく釣れ、母にお土産。
あの頃は、時間が立つのが早かった。
父さん、母さんおはよう。
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「パパ!カブトムシ捕りに行こう!」
たも網と籠を持った息子を見てあの頃を思い出す。
「ほら。行ってきますは?」
「ママ。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。パパの言う事聞くのよ。」
「それじゃ、行ってくるよ。」
「あなたも気をつけて。」
「おう。」
「美味しいスイカとひやむぎを用意しておくから、暗くなる前に帰ってきてね。」
「よし。森までパパと競争だ。」
自転車に乗って、一緒に森に向かう。
日陰を走っているはずなのに、
あの頃よりも少し暑く感じた。
隣の太陽は今日も満点に煌めいて、
私はひと夏の幸せを噛みしめる。
8/14/2023, 2:30:07 PM