題.紅茶の香り
私はあまり、紅茶が好きではない。
あの独特の味に香り、初めて紅茶を見た時はどのような風味か気になり口に含んでみたが、口の中に味が広がった途端、それはそれは後悔した。
以来、紅茶の香りがすれば私はあの時の、あの味を思い出してしまい顔を歪めてしまう。
そしてつくづく思う、好き好んで紅茶なんぞを飲む輩の気が知れない、と。
用事を済ませて、帰路につく私の元にあの香りがした。紅茶だ。
ついつい、顔を顰めて“全く、紅茶なんぞを好き好んで飲む輩の気が知れない”とつぶやく。
“私はあんなに苦いお茶を飲むあなたの気がしれません”なんて、心外だ、と言わんばかりの顔で声を上げる彼女はもう居ない。
帽子を被り直し、彼女が好きだった花でも包んでもらおうと、違う道を歩く。
10/27/2024, 10:42:26 AM