狭い道で前から歩いて来た人とすれ違おうとして、譲る方向が同じになっちゃうってことはよくあることなんだけど。
さすがに8度も同じほうになっちゃうのは気まずい。
「えっと、どうしたらいいですか?」
しびれを切らしてわたしが言うと、彼は「えっと、そうですね、じゃあ、こちらで」と立ち止まった。
立ち止まったので、進もうとすると、なぜか彼も同じほうに進みだし、ぶつかりそうになった。
えっと……と気まずくしていると彼が「あの……気が合いそうなので、お茶でもしませんか」と言った。
その道を歩くたび、「最後のはわざとだよね?」とわたしは聞く。
彼はいつも首をかしげて、ちいさく笑うのだった。
11/21/2022, 10:26:25 PM