夜桜と月

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桜の花が散る頃に花見に来る人間なんてそう居ない
そう思っていたけれど、案外悪くはなかった
桜吹雪の中で笑って振り向いた君が
あまりに綺麗で、桜の妖精のようだったから

たまらなくなったぼくは、
ひらひらと舞う花びらに手を伸ばしてつかむ
すると、きみが驚きに目を見張って
『何をお願いするの?』と問うてきた

……そんなの、決まってる。

心の中で願い事を呟いて
きみに「ないしょ」と告げる
むう、と唇を尖らせるきみに、笑いがこぼれた

──願わくば、きみとこの先もずっと、一緒に。

ひとひらの花びらを大切にポケットにしまって
僕はきみの手を握った。

お題:ひとひら

4/13/2025, 2:50:43 PM