John Doe(短編小説)

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おあいこ


テレビのニュースで『高校で銃乱射事件が起きた』と報道していたらしい。
でも、それはちょっと大げさ過ぎると思う。
実際、私はあの憎たらしいヒスパニックのパウラをコルトで二発撃っただけなのだから。
たった二発で銃乱射?
しかも六・三五口径のオートマチック弾。
頭に向けて撃てばそりゃ運が悪けりゃ死ぬかもしれないけど、胸と右腕を撃っただけ。
死ぬほど痛いかもしれないけど、死ぬことはない。

私が彼女を撃ったのは、彼女が私の容姿をバカにしたからだ。
メガネだの、オタクだの、そばかすの地味女だのと、とにかく私を侮辱した。
だから、ある時私は兄の拳銃コレクションからコルトを借りてジャケットのポケットに忍ばせて学校へ行った。
最初は脅すつもりで、彼女に銃口を向けた。
ところが彼女は怯えるどころか、「そんな小さな銃でしか自分を守れないだなんて、まさにアンタにお似合いだね」と笑った。

だから、私はまず、彼女の胸(心臓の近くは避けた)の辺りに一発、それから右腕に一発撃った。
教室中で悲鳴が上がり、教員も生徒も教室を飛び出して行った。
「痛い、痛い」と泣き叫ぶ彼女は無様だった。
だけど、私はスッキリしたのと同時になんとなく罪悪感も感じてきていた。
私は彼女に「死にはしない、たぶん。これでおあいこにしましょう」と言ってその場を離れた。

パトカーが来るまでの間、私は空腹を感じたので、誰かの机の上にあった可愛らしいお弁当を食べた。

そして、ひいひいと床に転んで苦しんでいる彼女の元に寄り、「食べる?」とおかずの一つを彼女の口に差し向けた。

「アンタ、イカれてるわ」

私は「アンタほどじゃないけどね」と言って、おかずを食べた。

美味しかった。しばらくはきっとこんなご馳走はありつけないだろう。

9/2/2023, 12:46:30 AM