正直
「へー、付き合ってるんだ、あの子と」
なるべく動揺しないように反応できただろうか。
胸の音がいつもより響いて煩く感じた。
心が抉られるというのはこういうことを言うのだろう。
私の長年大事に育ててきた想いは、嫉妬という、どす黒い何かで塗りたくられていくようだった。
顔の表情が強張りそうになりながらも
なるべく表情が変わらないように努めた。
相手は私の気持ちなんか知らずに、
惚気話に花を咲かせる。
正直に言えば、私は今から告白しても遅くないんじゃないかと感じた。
もちろんすぐに付き合えるとは思っていない。
でも私のこの想いを知ってもらえれば、
優しい君は少しでも私に意識を傾けてくれるかもしれない。
徐々にこちらに誘導すればいい。
「正直言うとね。私もあなたのこと好きなの」
6/2/2024, 12:41:39 PM