懐炉 @_attakairo

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「なんだよ」
 つっけんどんな態度になったのも、無理はない。と思う。だってそいつ、棒立ちで目ぇかっぴらいて、ずーっとこっち睨んでんだもん。前髪みじかいぶん、顔がはっきり見えた。真顔こわすぎ。家にあった古人形に似てる。こないだの供養祭で焚き上げたけど。
「だから、なに!」
 そいつ口開かずに、バッチリ指差してきやがった。先生に言ってやる、ってか。いやおれ何もしてないって。
 むしろ褒められるべきなんだよ!

「あんたがやったの。これ」

 口パクみたいに喋る奴。遠くないのに距離がある。
 きづいた。
 そいつが見てるのはおれじゃなくて、おれが持ってる箒と、となりに積み上がる山々だってこと。
「……そうだけど。なんか文句あんの?」
 言いつつ、口角があがる。
 見ろよ周りを。
 この丁寧な作業の成果を。
 ベンチの上、側溝の中、街路樹の下。二時間かけて一人で掃いた。
 どこも完璧なはずだ。

 そいつはまばたきもしなかった。
 当然、周りを見渡すこともしない。
 なんか恥ずくなって、とりあえずこの空気を終わらせるためにバサバサと袋を広げる。はやく帰らんと。風吹いてきたし……。
 背中向けてせっせと詰め込んでたら、いつの間にかそいつはいなくなってた。
 ほんと、ヘンな奴。学校で話のネタにしてやるか。
 荷物を両手に提げたところで、明日は休みなことを思い出す。



 月曜なのに休みなのは、なんとかの日。だかららしい。
 なんの日かは忘れた。
 特にワケはないけど、また来てみたり。ちゃんと昨日の成果は残ってる。歩きやすいし、ピカピカだ。おれすげー。
 階段を二、三段飛ばしてみる。

 てっぺんの踊り場に、そいつがいた。

 地面にぺったり座って、スケッチブックひらいて、画材ひろげて、なんか描いてる。
 きづいた。
 昨日そいつが、もう片方の手に提げていたもの。

 足音立てずに忍び寄る。
 絵だろうな。そんなことしか頭に無かった。
 ちがった。
 もうここには無い風景だった。

【落ち葉の道】

11/25/2025, 1:41:31 PM