「なんだよ」
つっけんどんな態度になったのも、無理はない。と思う。だってそいつ、棒立ちで目ぇかっぴらいて、ずーっとこっち睨んでんだもん。前髪みじかいぶん、顔がはっきり見えた。真顔こわすぎ。家にあった古人形に似てる。こないだの供養祭で焚き上げたけど。
「だから、なに!」
そいつ口開かずに、バッチリ指差してきやがった。先生に言ってやる、ってか。いやおれ何もしてないって。
むしろ褒められるべきなんだよ!
「あんたがやったの。これ」
口パクみたいに喋る奴。遠くないのに距離がある。
きづいた。
そいつが見てるのはおれじゃなくて、おれが持ってる箒と、となりに積み上がる山々だってこと。
「……そうだけど。なんか文句あんの?」
言いつつ、口角があがる。
見ろよ周りを。
この丁寧な作業の成果を。
ベンチの上、側溝の中、街路樹の下。二時間かけて一人で掃いた。
どこも完璧なはずだ。
そいつはまばたきもしなかった。
当然、周りを見渡すこともしない。
なんか恥ずくなって、とりあえずこの空気を終わらせるためにバサバサと袋を広げる。はやく帰らんと。風吹いてきたし……。
背中向けてせっせと詰め込んでたら、いつの間にかそいつはいなくなってた。
ほんと、ヘンな奴。学校で話のネタにしてやるか。
荷物を両手に提げたところで、明日は休みなことを思い出す。
月曜なのに休みなのは、なんとかの日。だかららしい。
なんの日かは忘れた。
特にワケはないけど、また来てみたり。ちゃんと昨日の成果は残ってる。歩きやすいし、ピカピカだ。おれすげー。
階段を二、三段飛ばしてみる。
てっぺんの踊り場に、そいつがいた。
地面にぺったり座って、スケッチブックひらいて、画材ひろげて、なんか描いてる。
きづいた。
昨日そいつが、もう片方の手に提げていたもの。
足音立てずに忍び寄る。
絵だろうな。そんなことしか頭に無かった。
ちがった。
もうここには無い風景だった。
【落ち葉の道】
11/25/2025, 1:41:31 PM