『バレンタイン』(創作)
2月14日、わたしはパチ屋にいる。
初めて入った。チョコの紙袋を片手に、システムもわからず、何をしてよいのかもわからなかったから、大きなウインドウ側のソファーに座った。独特の喧騒と不思議な匂いが、わたしを拒絶しているかのように感じられた。
店員に怪しまれないか不安になったが、気にしてる様子もなかったので、ソファーに座ったままスマホを取り出した。
「今、パチ屋にいる。着いたら連絡して」
コンビニで買ったチョコの紙袋が、初対面の男性との関係を嘲笑っているようだった。
帰りたい…
心の片隅で小さな悲鳴が上がるが、わたしはソファーから動けずにいた。わたしはわたしを無視して、これから初対面の男性にチョコを渡すのだ。
2/15/2023, 1:57:49 AM