「……これ、よろ」
「ん?みかん?」
いつものようにこたつでぬくぬくしながらスマホをいじっていると、目の前に置かれたみかん。こたつの上に置いといたみかんのうちのひとつだろう。
「え、澄香?よろってなに、よろって」
ばっとからだを起こすと、ちらりとこちらを一瞥した彼女、澄香。相変わらずパソコンをかたかた言わせている。
冬休みの時期くらい休んでればいいのに。
「……あ、剥けってこと?」
自分で剥きなよーなんて言いながらみかんに手を伸ばす。
確かに澄香はプチ潔癖症なところあるからなぁ。みかん剥いたあとは洗っても洗ってもパソコンいじるの躊躇っていたし。
「はい、どーぞ。澄香女王さま」
「…ちがうでしょ」
「えっ」
ご丁寧にパソコンのよこにおいてあげたのに、まさかの違うと。
え、えー…剥けってことじゃなかったの?
それ以外にある?
「ん」
「……ん?」
澄香は小さく口をあけて、ここにいれろといわんばかりの表情である。
「あー、はいはいはいわかりました、わかりましたよっ。食べさせればいいんでしょ、食べさせればっ」
「遅い」
身をひとつ、片手にとった次の瞬間、その片手を引き寄せられて食べられた。
「おいしい」と妖艶に微笑んだ澄香が髪を耳にかけ、私はとっさに澄香をさん付けで叫んだことは言うまでもない。
─みかん─ #154
12/29/2024, 11:48:06 AM