「あれからどれくらいの時が経っただろうか」
誰とも接することも無く、何十年という年月を独りで過ごしてきた。
寂しさというものは最初からなく、何故誰かと共にあろうとするのかが分からなかった。
きっと、それは寂しいことなのだろう。だが、それを理解することも無く、理解出来ることも無くここまできた。
「最後に、人と触れ合ったのは何時だったか」
自身の右手を眺めながら思いを馳せる。
どれだけ思考を繰り広げても、思い出すことができない。
そもそも、人と触れ合ったのだろうか?
触れ合ったとは思う。過去すぎて思い出すのも一苦労だ。
その時の温かさを思い返す。
「……」
人と触れ合う温かさ。確かにあったのかもしれない。
暖炉に手をかざす。
木々が弾ける光景に心と手が暖まる。
「暖かい。こっちの温かさの方が100倍心地いい。こんな考えしかならない俺は、きっと誰にも理解されないだろう。そして、一人でいて正解だった。誰も愛せないし、誰も愛してはくれないだろうから」
もし、もしもだ。こんな俺を受け入れる誰かがいたとしたら、誰かと共にあゆみ、独りが寂しいと感じたのだろうか?
「年かな。こんな事、考えても仕方ないのにな。いや、これが寂しさを感じているということか?ははは。柄にもないな。ありえない。だとしたら、こんなにひとりが楽しいはずがない」
だとしても、やはりこんな自分でも受け入れてくれる人がいたのなら、何かが変わっていたのかもしれない。
2/28/2025, 12:20:21 PM