谷折ジュゴン

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創作 「快晴」

青色に染まった筆先を、ガラスのコップの水で洗う。みるみる水に色が溶け、すっかり筆先は元の色に戻った。今度はパレットから白をすくい、馴染ませてから、様々な青の上にのせて、薄くのばしていく。やがて、白は波しぶきになり、海の絵が出来上がった。

ものの数十分で海を描きあげた少女は、なにやら不満そうに首をひねった。紙の上半分には何も描かれていない。どうやら空をどう描こうか考えているようだ。

海の色をみるに、夕方ではないらしい。だが、少女は筆を置き、窓の外を見た。雲ひとつない、空。
少女はまじまじと空を見つめると、あっと声をあげた。そして、再び筆をとると思い描く色を作り、空白を埋め始めた。

光、空気、透明感。全てを描き込み、絵が完成へ近づいていく。やがて、少女は筆を置き出来上がった絵をみた。満足そうにうなずいて、うんと伸びをする。

絵のタイトルはもちろん、快晴だ。

(終)

4/13/2024, 11:31:23 AM