22時17分

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君と歩いた道は、世間にとっては無名である。
通学路という名の無名。
その道中、駅の北口付近でイベントを目撃した。
それは、線路の向こう側へ行こうとする悪ガキたち。
今ではちょっとどころかどこにも見かけない。授業をサボり、校舎の片隅でワルをやって、吸い殻を足で踏み潰して消している連中だ。生徒指導の先生に見つかったら、しょんぼりするどころか蹲踞の格好で悪態をつく。学ランのボタンは全開、黒のスラックスはだらだら。学校というものをバカにした未開社会の文明だった。
そんな不良に憧れた中学生が、5人くらいの徒党を組んで、道路と線路を区切るフェンスを乗り越えようとする。

あっ、と僕も思った。君も思っただろう。
けれど、止める間もなく、入って注意を呼び止める仲でもなく、距離もなく。いわゆる危ない香り、臭いラフレシアには億劫だったから、そのままにした。
手慣れたやつが先に入り、「おい、早くしろよ」とくすんだ緑のフェンス越しに徒党を急かす。小柄の坊主がフェンスの網目に絡まって、手足が引っかからずにガシャンと鳴った。それを怒るどころか喜んでいた。たぶんきっと。怒られるかもしれないことに欲求不満だったのだろう。
若干躊躇したが、10秒以内に踏破した。それからは、マリカーの「カラカラさばく」のステージみたいに、線路を通って近くのホームへ走り出す。無銭乗車。改札を通らないヤツら。

降りる時はバレると思うが。きっと怒られるだろうなー。と思いながら、無名の通学路を青春色にした。

6/9/2025, 9:41:18 AM