香草

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パソコンの再生ボタンを押す。
心臓のドクンドクンという音が耳に届く。
ロードの円を見つめて深呼吸をする。
緊張で全ての感覚が研ぎ澄まされてるからか、見なくても父親が固唾を飲んでこちらを見つめている様子がわかる。

画面が切り替わり、一人の女性が映った。
「初めまして…だね。あなたのママです。」
堪えていた涙があふれだす。
ただ、その姿を焼き付けたくて、涙なんかで邪魔されないよう目を見開く。
「20歳のお誕生日おめでとう。どんなふうに成長してるのかな…。きっとママに似て美人なんだろうね。勉強も得意かな?もしかしたらパパに似て苦手かもね。彼氏とかもいるのかな。」
ふふっとはにかむ。
「あなたが元気でいてくれればママは幸せです。
生まれてきてくれてありがとう。直接言えなくてごめんね。改めて20歳おめでとう!」
ママが死んだのは自分のせいじゃないか。
20年間ぐるぐると渦巻いていた黒い感情が消えた。
会ったことない。話したこともない。他人のように遠い存在だけど、これほどまでに愛を感じたことがない。
父親が頭をなでる。
「ママに似て良かったな。」
アメリカ留学推薦の合格通知を握りしめる。
各大学の成績優秀者のみが参加できる長期プロジェクト。2週間後、私はそれに参加する。
「いつでも帰ってきていいからな。」
声が震えていたような気がした。

12/9/2024, 3:17:45 PM