「私の名前」
人にはそれぞれ自分を認識するための名前がある。
未来、ひとみ、花、葵。
世の中には数え切れない程の名前があり、同じように数多くの漢字、読み方が存在する。だから当然、一緒の名前になってしまう人もいるのだ。
遥、小春、結衣、光莉。
私の名前は紅葉。
よく見る定番の名前ではあるがおそらく私と同じ名前の人は数少ないことだろう。
この名前を見たら、もみじ、もしくは くれは と読む人が多いかもしれない。しかし、私の名前はそんな可愛いものではない。
────────私の名前はめいぷる。
私はこの名前が嫌いだ。
私は自他ともに認めるいわゆる普通の女の子で人と違うところと言えばこの名前くらいだっただろう。だからだろうか。この名前のせいで私には特定の友達がいなかった。
「あいつってさ、めいぷるって名前の割には普通だよな」
そうやって笑う声を私は何回聞いただろうか。
最初の頃はそんな言葉に傷ついて流していた涙も今となれば一滴も出ない。
人間いつかは慣れると言ったもので、私はもう笑う声を聞いても何も感じなくなってしまっていた。
だけど時々ふと考えてしまう。
もしも。
もしも、私がめいぷるに似合うような奇抜な、可愛らしい容姿をしていたら。
もしも、私の名前が普通の女の子の名前だったら。
私は今頃沢山の友達に囲まれ幸せに暮らしていたのだろうか。
下を向いて生きることは無かったのだろうか。
でも今更そんなことを考えたところで過去も未来も変わりはしない。
そんなくだらないことを考えながらも私は、今日もこの生きずらい世界で生きていかなくてはならないのだ。
7/20/2023, 11:54:22 AM