愛と平和
太陽が顔を見せ始めた。目覚めてすぐ、いつものようにくちばしで羽繕いをした。健康の為の大事な作業だ。
羽を整えたあと、我が家に異変がないことを確認し、飛び立つ。さて、今日はどこまでいこうか。
砂埃が舞う。乾燥した国だ。寒暑の差が激しい。昔から民族問題や宗教問題が絶えず、更に悪いことに、それを綱引きとして大国が干渉してくる。世界平和度指数163位、最下位の国の空はやはり空気が重い。流れ弾に当たる前にここは去ろう。
海から暖かい風が吹いてくる。緯度の割に温暖なのはこのせいか。火山が活発で温泉も多い。地元民も観光客に開放的に見える。この国は軍隊が無いそうだ。犯罪も少ない。もともと、争うという思考があまりないのかもしれない。福祉水準も高く、LGBTにも寛容的だ。世界平和度指数1位の理由は、そういうお国柄からなのだろう。旅の記念に夜のオーロラを見てから日本に戻ろう。
日本は世界平和度指数9位だという。まあまずまずかな。戦争もなく、世界平和に高く貢献しているといっていいだろう。気になるところといえば、ここ数十年、人が減っているということだ。平和で経済的にも豊かと言われている国なのに、愛の数が減っているのか。人間の社会は複雑だな。
巣に戻ると、伴侶が出迎えた。旅で疲れた羽を、くちばしで優しく繕ってくれた。
餌は取ってきてくれました?
あっ、と声を出す。
今度、温泉にでもいこうか。いい所を見つけたんだ。
もう、また誤魔化して。明日は忘れないでくださいね。
3/10/2024, 11:13:31 PM