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 本気の恋しか、俺はしたことがありません。
 相手は勿論、貴女ただ一人です。

 俺がそれまでに女と結んだ関係は、恋などとは呼び得ない、ただ俺の性欲を女にぶつけるだけの、一方的な蹂躙に過ぎませんでした。
 だから貴女が俺を心底愛してくださっていると気づいた時、俺はどうやって貴女を愛せばいいのか、全く分かりませんでした。けれど、貴女の愛を一身に受けたい、貴女とずっとずっと一緒にいて、互いを慈しむ生活がしたいと、心の底から願ったのです。それはきっと、恋と呼ばれるものなのではないでしょうか。

 それが、貴女が俺に与えてくれたような、本物の愛ではなかったことは確かです。その証拠に、貴女が亡くなったと知った俺は、貴女の遺言に背いて貴女の後を追って死にました。

 そんなものは、愛ではないのです。
 相手がいなければ自分は立っていられない、相手が死んだなら自分も死ぬ。それは身を焦がす恋ではあっても、相手を本当に大切に思う愛ではないのです。

9/12/2024, 3:30:22 PM