語り部シルヴァ

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『仲間になれなくて』

水の入ったバケツを個室の天井に向かって投げる。
ビシャビシャと中の水がぶちまけられる音が聞こえる。
するとクラスの一軍女子たちの甲高い笑い声がトイレに響く。
私は頬を無理やりあげて笑う。

個室に行こうとすると
女子の一人に呼ばれて私はそれについて行く。
教室に戻って話を聞いていると
ガラガラと音を立てて教室のドアが開く。
大きな音で教室内の生徒はほぼ全員ドアに視線を向ける。

びしょ濡れの君が教室に入ってきた。
「ちょっとぉ〜、ドブネズミが入ってきた〜」
「やだ〜不潔。ははっ」

一軍女子はそれを見て笑い、連れの男子は野次を飛ばす。
他の人は色んな思いを秘めながら見て見ぬふりしかできない。
君は何も言わず濡れた体を
カバンから取り出したタオルで拭き始める。
その姿を見た一軍女子はまた笑い出す。

ごめんね。君の仲間になれなくて。

語り部シルヴァ

9/8/2025, 11:16:45 AM