『冬のはじまり』
ある日いつものようにコンビニに入るとこれまでなかったガラスケースがレジ前に鎮座していた。もうそんな時期なのか、と思わず声に出し、そしておもむろに近づく。ケースは内側が水滴で曇っているところもあり、内部の湿度の高さを物語っている。中におわすのはふくよかなボディに肉やあんこやピザを内包したバラエティに富んだ饅頭たち。そう。コンビニ肉まんの季節がやってきたのだ。
「肉まんください!」
思ったより大きな声が出て顔なじみの店員さんに笑われたけれど一切かまわない。会計を済ませて店の外に出るやいなや、火傷しそうに熱い肉まんに早速かぶりついた。およそ1年ぶりの邂逅に過去の記憶の中で消えつつあった肉まんの味が新たに書き込まれる。
「始まったな、冬」
ひとり呟いたあとは肉まんのおいしさに感謝を捧げつつ、無心に味わい尽くすばかりだった。
11/30/2024, 4:15:07 AM