海へ、向かう。
季節は問わない。
ただ、海を見に行く。
普段、海を見ない生活をしてるから、フロントガラスの向こうに海が見えてきた時は、いつも少しだけテンションが上がる。
非日常であり、ドラマティックであり、開放的で、畏怖すら感じる。
遮るもののない風景が広がっているのに、その先へは進めない。
行き止まりだ。
我が国の行き止まりに辿り着き、大海原に思いを馳せる。
自分はちっぽけで、ちっぽけな自分がちっぽけな悩みを抱えて、昨日はあのオフィスビルで心を痛めてた。
居場所がそこにしかなくて、周りを不安で固められて、好奇の目にさらされて、逃げ出す扉は閉じられたまま。
身動きが取れないほどの屈辱を抱えたまま、終業のチャイムを聞いた。
一夜明けて、あの場所から逃げ出してきたけれど、やっぱりこの先へは行けない。
また車に乗って、あのオフィスビルのある街へ帰るだけ。
砂浜に立ち尽くし、非日常を味わい、今や静まり返ったテンションで、これからを想う。
…きっとうまくいく。
どんな一日も終わり、また水平線の向こうに太陽は昇るから。
帰りの車の中で、私がさっきまで立っていた場所が行き止まりではないことに気付いた。
車を捨てて、船に乗ればいい。
太陽に向かって、船を漕ぎ出せばいい。
自分の中で、勝手に線を引いて留まっていただけだった。
でも、私はまだ、逃げ出さないことに決めた。
あのオフィスビルで戦うことに。
いつか、この戦いを終えて次のステップに進む時が来たら、私は船に乗って、この大海原へ漕ぎ出そう。
いつかまた、海へ。
その日まで、その日に向けて、私は戦う。
8/23/2024, 12:34:51 PM