しがない学生

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【揺れる羽根】

祖母「ねえユイカちゃん。天使って知ってる?」
私「天使?」
祖母「人では無いの。でもね、もう死んじゃうっていう時に現れてくれるのよ。
特に火の関係で亡くなっちゃうときに来てくれるみたい。
そう、"天国まで運んでくれる役目"があるのよ。」

小さい時の夢を見た。
まだおばあちゃんが生きていた頃。
"天使"という存在をよく話してくれていた。

いや、話されていた。

この事を思い出す度に、死んでしまった両親も"天使"に会ったのかなと思う。
放火事件に巻き込まれただけの両親。
天国に行けていたら良いなって。
ただ、恩返しが出来なかった事だけが心残りだ。

友達「てか聞いた?ユナちゃん死んだの。」

電話中の友達がそう言った。

私「ユナちゃん?」
友達「ほら、中学の時に高嶺の花だったさ。」
私「あー!えー!?何で亡くなっちゃったの?」
友達「確か……爆発事件。最近〇〇神社で行われた夏祭りで爆発事件起こったじゃん。」
私「あー……」

私達の地元で行われた夏祭りで爆発事件が起こった。
確か…店主の不注意?みたいなので。
それに巻き込まれたらしい。

友達「もう全身丸焦げだってさ。」
私「えー……怖いね……」
友達「何が起こるか分からないからねえ……」

この日はこれで話は終わった。
何だか両親も友達も、火に関するもので亡くなっていて少し寒気がしてしまった。
自分自身も、火を見ると目を逸らしてしまうようになった。
そう、ただそれだけだった。

バイトが終わった時間は夜。
狭い道で向こうからは「火の用心」と言う集団が前を歩いていた。
火のような物を持っていた。

私は無意識に、火を避けるために曲がり角を曲がっていた。

私「(早めに帰ろ……)」

トントン、
後ろから軽く肩を叩かれた。
振り向くと若い男の人だった。

若い男「これ、落ちましたよ?」
私「ありがとうございま……え、」
若い男「ああ、すみません。」

ハンカチを拾ってくれたのは良いけど、その場に落とされた。
と言うかわざと落としたような感じがある。
薄暗い場所だし少し怖い、この人。

私「(変な人…)ありがとうございます……はっ?」

ジャバジャバ、
落とされたハンカチを拾おうとしゃがんだ瞬間、頭の上から何かを掛けられた。

若い男「ふふっ、」

男は笑っていた。
そして、片手にはライター。
私はそれを見た瞬間、すぐに察した。
掛けられたのはガソリンだ。

私「まっ…待って!!!誰か!!助けて!!!」
若い男「すぐに済みますよ。」

カチャッ、
若い男は焦る私に対してニコッと微笑み、火を付けたライターを私に投げた。

死ぬんだ、私。
その時におばあちゃんの言葉を思い出す。

「特に火の関係で亡くなっちゃうときに来てくれるみたい。
そう、"天国まで運んでくれる役目"があるのよ。」

私「天使さんっ……助けてっ………」

意味も無い、若い男に手を伸ばす。

若い男「ははっ、無様。」

神様は死にそうな私に天使も送らず、

今までの"放火・爆発事件の犯人"を送った。

10/25/2025, 11:49:36 AM