あると

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『優しさだけで、きっと』

 レクアイド族__聖なる森をまとめあげる少数種族。

 動物たちも、ウナイ族もカテリア族もカッソ族も。聖なる森のいきものを従える、尊く、誇り高き種族。
 金髪と、金の瞳がめじるし。

 彼らにとっては、他のいきものは皆ひとしく下位種族。森の子たちはそれが常識。
 __レクアイドか、それ以外か。
 森の子たちは二分されたその世界を疑わない。
 どうやったって変わらないと思っている。

「ごめんなさい、ぼく。立てる?ケガはない?」

 そんな森に、彼女は、よくなかった。

「大丈夫、大丈夫よ。擦りむいたとこ、洗いに行こっか」

 じゅくじゅくと体液が染み出る膝を地面につき、頭を垂れ、謝罪を繰り返すウナイ族の男の子に、彼女はハンカチを差し伸べた。
 肩に手を回して、公園に付き添って、処置まで終わらせた。

「なんてこと……」

 周りの誰かが呟いた。
 レクアイド族が、「下々の民」に寄り添った。そんなことがあっていいのか。
 噂が森じゅうを駆け巡る。
 「街角でぶつかった少年をたすけ導くレクアイド」の話は、森のいきものたちに「神」を与えた。

「彼女こそ、最も尊ぶべき清らかなる女神であり、平等を実現する救世主」

 いきものたちは声を上げた。

 やはり彼女はよくなかった。
 優しさだけで、きっと、森の均衡を崩してしまうから。

5/2/2026, 1:18:39 PM