きづめ

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6歳のとき真奈はまだ自転車が上手く漕げなかった。なのでいつも親に送り迎えをしてもらった。よく自転車に乗って遠くまで遊びに行っていた中学生の兄には、真奈はとても憧れた。
「自分のあしで、あんなにとおくに行けるんだ!」
親は真奈が成長するにつれ、送り迎えの頻度を減らして、真奈に自転車の練習をさせるようにした。そんなある日のことだった。
「痛っ……!」
鼓動の速さを遠くに感じながら、膝頭のあざやかな血を呆然とみつめた。
怪我は軽かったが、自転車の恐怖は真奈に纏わりついて離れなかった。あんなに憧れた「自力」が怖くなった。いつまでもおかあさんに送り迎えしてもらえたらいいのに。情けないけど、呟きが漏れ出た。


自転車に乗って、自分の力で遠くに行きたい。
怖さを乗り越え、あの頃の真奈の気持ちが戻ってくる日は、きっと来るのだろうと思う。

8/14/2024, 12:16:24 PM