土を掘る。
掘る。
肌を刺す寒さと月光の中、滲み出す汗を拭って掘り進める。大きなシャベルを振りかざす。土くれを抉る。
腰まで埋まるほどに掘った穴を拡げ、側に山を積みあげて、地面に突き立てたシャベルにもたれて荒くなった息を吐く。
真っ白いけむりが細くたなびいた。ひとりぶんだけ。
やっとのことで見つけた棺の土を払った。木の色をしたそれはずいぶん汚れてしまっていた。
蔦の生い茂った教会。隅の共同墓地。
まともな墓石さえ刻まれない、こんなところにあなたを置いておくわけにはいかない。
抱きあげたあなたの体は、誰より綺麗だった、誰より特別だったあなたは、葬ったときよりずいぶん軽くなってしまっていた。
3/23/2023, 2:44:37 PM