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天の川きれいだね、そう言って天高く光る星の川を指さしたのはいつの事か。
あの時から約数十年。自分もすっかりくたびれたおじさんになってしまった。
夜遅く、自分と同じくすっかりくたびれたスーツを肩に引っ掛けて会社を出る。
ふと見上げれば一面に広がる星空。あの時となんら変わらない星の川がそこにあった。
しばし立ち止まってその白銀の星々を眺める。
時間とともに輝きを失った自分とは違って、星たちはあの時のままの輝きを保っていた。
「……帰るか」
そう、呟いて背を向ける。郷愁に浸るにいささか歳をとりすぎてしまったのだ。

7/6/2024, 3:33:33 AM