川柳えむ

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 新年一発目の部活動。
 漫画研究部の部員は部室に集まって会議をしていた。

「今日の会議のテーマは『今年の抱負』だ!」

 部長が黒板の前に立ち、力強く言った。

「すごい。今日の会議はまともだね」
「おいおい。それじゃあ普段の活動がまともじゃないみたいじゃないか」

 後輩の言葉に先輩がツッコむ。

(いやその通りなんだけど……)

 漫画研究部なのに、普段の先輩達は漫画を読むだけだったり(研究していると言われてしまえばそれまでだが)、いちゃいちゃしたり(全員男である。ちなみに正確に言えばなぜか部長が先輩達に好かれ過ぎているだけである)、好きなタイミングで勝手に帰ってしまったりと、やりたい放題である。
 いろいろ言いたいが、その言葉を飲み込み、後輩は部長に尋ねる。

「それで、部活の今年の抱負を決めるわけですね? たとえば、全員一作品は何かの賞に応募するとか!」
「そうだなぁ。まずは全体の抱負を決める前に、個人の抱負を聞きたい」

 そう言うと、部長は先輩のうちの一人を指した。

「今年の抱負、何か考えてるか?」
「もちろん! 今年の抱負は、去年の倍は踏んでもらうこと!」
「はっ!?」

 そう。部長は好かれ過ぎている。しかも、変な方向に。
 この先輩が部長に踏まれるのも、恐ろしいことに見慣れた光景なのである。そして、その回数を増やしたいとドMっぷりを発揮しているのも見慣れたものなのである。

「そうか。じゃあ次の奴!」
「部長はそれでいいんですか!?」

 今度こそ後輩がツッコんでしまうが、何事もなかったかのように会議は進んでいく。

「今年は部長に認知してもらいます!」
「間違いなくもう認知されてますよ!」
「いや誰だっけ?」
「あれだけ一緒にいてそんなことあります!? ていうか漫画のことは!?」
「部長!」
「部長!!」

 そんないつもと変わらぬ感じで流れていき……。

「で、後輩の今年の抱負は?」

 そう振られた彼は、こう返した。

「…………もういっそ部長と先輩達のことを漫画にして賞に出してやります!」

「おーっ!」と歓声が上がる。
 そして、その漫画は無事に応募され、賞を取り、連載を取ったとか取ってないとか。


『今年の抱負』

1/3/2024, 7:21:51 AM